2021年03月21日

おいしくご飯を炊いてみる

おいしくご飯を炊いてみる

 はますかむすびの大将です。当店のごはんのおいしさについて聞かれることがあります。
 そこで、お米の選び方から炊き方までを大公開します。

(お米はあきたこまち)
 お米は秋田県大潟村の黒瀬農舎からあきたこまちを取り寄せています。有機農家のグループで、JAS有機米や農薬不使用の栽培、初期の水田除草剤1回だけ使用した栽培などでお米を作っています。肥料は有機質肥料のみ。収穫後は生産者の低温倉庫で保管し、注文ごとに精米しています。お米の性質に合わせた保管や精米方法は年間を通しておいしさがある程度一定になる条件です。黒瀬農舎については、また別の機会にくわしくレポートします。
 あきたこまちは、炊きたてだとねばりが強いのですが、冷めるとしっかりした口当たりでうまみはそのままのおむすび向きの品種です。水を吸うのに時間が必要な品種なので、長めの浸水時間が欠かせません。
 あきたこまちの無洗米なども市販されていますが、無洗米だからといって水を入れてすぐに炊飯するのはあまりおすすめできないのです。

(お米の選び方)
 お米の品種はたくさんあります。代表的なのがコシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれ、ヒノヒカリなど。最近ではつや姫、ゆめぴりか、ななつぼし、こしいぶき、青天の霹靂など、新しい品種もめにつくようになりました。ねばりが強いもの、香りが強いもの、粒がしっかりしたものなど、好みによって選べます。価格帯もそれなりに幅があります。また、無洗米とそうでないお米があります。どれがすぐれているということはありませんが、共通する注目ポイントを上げてみたいと思います。
 まず、お米は生鮮品です。精米日からできれば2週間、遅くても1か月以内には食べきるのが望ましいです。直射日光や湿気の多い場所におかなければ、1か月過ぎても食べられますが、「おいしさ」にこだわるなら、鮮度を大切にしてください。
 次に、「白すぎない」ことも大切。見極めが難しいのですが、お米の精米はほんとうは高度な技術です。まっ白くきれいにみえるお米は、精米しすぎていることがあります。お米のうまみは玄米から削り落とす「ぬか」の部分にあります。ぎりぎりまで白く精米するけれど、完全に白すぎないぐらいに精米してあるお米がおいしいです。でも、精米したぬか部分は酸化しやすいのでスーパーなどで売られている米はほとんどまっ白。見た目もいいですが白ければいいというわけではないのです。
 もうひとつ、粒がそろっていること。比較的安いお米の中には、小さく欠けた米粒がたくさん入っていることがあります。また、米の粒が大きかったり小さかったりするものもあります。粒のそろいが悪いと炊飯時にむらができたり、水っぽくなったりするのでそのようなお米を炊くときには、水加減をできるだけ減らすなどの工夫が必要になります。
 できれば、特別栽培米や有機栽培米など、環境に配慮したお米を選んでください。日本の農薬使用量が一番多いのは水田稲作です。田んぼは、いろんな生きものを育み、水を浄化する役目もあります。そこに不必要に農薬を使ったり、収量を無理に上げるため肥料を入れすぎると、生物を減らし、水を汚染してしまいます。また、農薬や必要以上の肥料を使わないよう配慮したお米は、そのための栽培の苦労が結果としてお米をおいしくしてくれます。だから、お米を選ぶときに、栽培方法にも目を向けてください。

(お米の研ぎ方)
 かつてお米は「研ぐ」と言っていました。表面の汚れを取るだけでなく、磨く役割もあったのです。現代は、精米機がほとんどその役割をしてくれますので、お米を「洗う」程度で十分になりました。しかし、「研ぐ」「洗う」最大の理由は、米に「水を吸わせる」ことなのです。米は生鮮の乾物です。乾物は水に戻して使います。米も炊く前に水に戻す必要があります。その戻し方が肝心です。
 まず、最初に、ボウルに水をたっぷりめに貯めます。
 そこに、計量した米を水面が波打たないようにそおっと流し込みます。
 30秒から1分ぐらいまって、水を切り、米をやさしくかき回します。そして、流水を使って手早く1〜3回すすぎます。少々にごりが残っても構いません。
 あとは、炊飯に必要な水の量をはかって、給水のための時間をおきます。

 ここで、大切なことは、
 最初に米に流水をかけないこと、です。

 乾いた米に流水をかけると、水が一気に濁ります。
 乾いた米は、濁った水を吸い込むことになります。この濁りは表面の酸化したぬか分なので、そのぬか臭さが米に移ってしまうことがあります。
 乾いた米には、澄んだ水を吸わせてください。

 つぎに大切なことは、給水時間を長くとることです。
 品種にもよりますが水を吸いにくいあきたこまちだと最低でも2時間は給水時間を取りたいものです。品種によっては、長すぎる給水で米がやわらかくなりすぎることもあります。加減してください。

 もうひとつ、給水・炊飯のための水は冷たい方がおいしくなります。
 はますかむすびでは、前日夜に洗米したあと、計量した水に入った米を冷蔵庫で一晩冷やしています。ゆっくりじっくり給水させています。

 冷たい水から炊飯する方がおいしくなるのです。

(お米の炊き方)
 はますかむすびでは、大きいのは3升炊きのガス釜にはじまり、5号炊きの土鍋、玄米用の圧力鍋、臨時用の1升炊きガス釜やIHを使っています。
 ここでは、家庭用の土鍋炊飯の方法と、電気釜について紹介します。
 最低でも3合から炊いてください。ふだん1合2合の方は、炊き上がったら取り分けて冷凍して保存することをおすすめします。3合より少ないと、どの炊飯方法でも本当の米のおいしさが出てきません。
 また、どの炊飯方法でもできるだけ冷たい水で炊き始めることです。氷を入れて冷やすときには、必ず氷が溶けきってから火をかけてください。氷が残っていると、そこに炊きむらができてしまいます。それから、早く炊こうと思ってお湯からはじめるのは間違いです。決してやってはいけません。

 家庭用の炊飯専用土鍋がある場合は、それが一番簡単でおいしくなりますが、なくても、普通の土鍋があればおいしく土鍋炊飯ができます。
 ポイントは、中強火で15分。火を止めたら蓋を開けずに20分のむらし。それだけです。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ」は忘れてください。あれは薄い鍋や熱伝導しやすい鉄釜を使うときの方法です。土鍋は中が熱くなるまでゆっくり時間がかかるので、はじめちょろちょろがいらないのです。そして、そのまま15分して火を止めてもゆっくりしか冷めないので、むらしも十分になります。
 15分と言っても、炊く量や土鍋の厚さ、火力によって調整は必要です。
 10分過ぎたころからはやめに勢いよく湯気が噴き出してきたら、火を弱めて15分まで弱火にします。
 だいたい14分ごろから吹き出すのがほどよい感じなので、何回かやってみて適切な火力を見つけ出してください。
 蒸らし時間がおわったら、蓋を開けてご飯をふんわりかき回し、ちょっと水気を飛ばしてからおいしくいただきましょう。

 電気釜の場合ですが、IHではないふつうの電気釜の場合は、火力がどうしても弱めなので、なるべく水を規定量より減らします。それから、炊き上がったら、20分の蒸らし時間をとってから、釜の蓋を開けてご飯をふんわりとかき回し、ちょっと水気を飛ばしてからおいしくいただきましょう。
 IHの場合やIH圧力釜のような高級電気釜の場合にはあまり気にすることはありません。炊飯器に任せ、炊き上がりの合図があったら、ご飯をふんわりかき回し、ちょっと水気を飛ばしてからおいしくいただきましょう。

 ご飯を炊くのは難しいことではありませんが、少しだけ手順を整えるだけでお米の力が引き出せます。時間があるときにやってみてください。

(めんどうなときには)
 時間がない、小学校中学年以上で自分でご飯を炊きたい、そんなときに、めんどうなことは言いません。無洗米でなくても、洗わなくても、浸水時間をとらなくても、米は炊けます。
 電気炊飯器があればカップで米を入れ、同じ量の水を入れて、スイッチを押す。それだけでだいじょうぶ。
 鍋だったら、同じようにカップで米を入れ、同じ量の水を入れて火をかけ、吹いたら弱火にして合計で15分。そのあと20分はがまんして合計35分でご飯が炊けます。
 待ち時間の間に、ふりかけや塩、缶詰などを探して食べればりっぱな自炊ご飯です。
 一手間かけておいしく食べることも大切ですが、おなかが空いたら自分で早くご飯をつくって食べることも大切です。
 食べ終わったら、洗い物はちゃんとしておきましょう。次の料理のために。
posted by むすびぃ at 19:55| 店主の雑文